スパイスとハーブの違いはなんだろう?使い方も知りたい
料理の風味を引き立て、本格的な味わいを実現するスパイスやハーブ。その違いをご存知でしょうか?
かつてスパイスやハーブは金と同じ価値で取引されるほどの高級品でした。航海の歴史は、スパイスを求めて各国が激しく争った戦いの歴史でもあったのです。
今回は、スパイスとハーブの定義の違いを明らかにし、それぞれの役割と使い方について詳しく紹介します。最後には、主要なスパイスとハーブもご紹介しますので、ぜひ食卓に取り入れてみてください。
- スパイスとハーブ、野菜の違いとは?
- スパイスとハーブってどんな形がある?
- スパイスとハーブの役割とは?
スパイス、ハーブの基礎知識
スパイスとは?
スパイスとは、主に料理に風味や香り、色を加えるために使われる植物由来の成分や製品です。スパイスは通常、乾燥させた植物の部分(種子、果実、根、樹皮など)であり、料理に独特の味わいや香りをプラスします。
スパイスの種類や使い方には地域ごとに違いがあり、料理のスタイルや文化によって使い方はさまざま。スパイスの入手ルートや歴史的背景により、スパイスの定義は各国ごとの違いがあります。
ハーブとは?
ハーブとは、主に料理や医療、コスメ、香りの目的で使われる植物の分類で、主に葉や茎が主な部分を指します。スパイスより、フレッシュな葉や茎が多くイメージされています。
ラテン語のHerba(ヘルバ:草木)が語源です。ハーブは現在数十万種あるとされていますが、多くは毒を含むため、食用として使われるハーブはごくわずか。
ハーブは通常、新鮮または乾燥した状態で使用され、料理の風味や香りを引き立てます。また、健康効果が期待され、薬草として治療法にも用いられてきました。
スパイスとハーブと野菜の違いとは?
それでは、スパイス、ハーブ、野菜の違いはなんでしょうか。
この3つの区分は曖昧で、はっきりと定義されているわけではありません。
食用の植物のうち、スパイス、ハーブ、野菜のひとつに該当するタイプもいれば、2つあるいは3つの顔をもつタイプもあります。
植物の部位によっても、その分類が異なる場合があります。例えば、シナモンは樹皮はスパイスに分類されますが、葉はスパイス、ハーブに分類できるでしょう。
生姜は根はスパイス、野菜として分類されますが、早期に収穫する葉や茎は野菜、ハーブとして扱われます。
一方カレーリーフは生のフレッシュな状態で用いられますが、スパイス、ハーブに属し、野菜には属しません。
ヨーロッパでは自家栽培できるかを違いとして分ける説がある
ヨーロッパでは自家栽培が可能かをスパイスとハーブの境界にしていることがあります。
例えば、ハーブに該当するのが、ミントやバジル、パセリ、ローズマリーなど自家栽培できる草花です。シナモンやクミン、胡椒、オールスパイスのように、自家栽培できない植物の根や茎、皮、種子類をスパイスと分類しています。
しかし、同じ植物から花、葉、茎、根、皮などが採取でき、部位によって名称が変わる場合もあるので、やはり境界は曖昧です。
スパイスとハーブの形状
スパイスとハーブの状態
まずスパイスとハーブは生のフレッシュなタイプか、乾燥させたドライのタイプに分かれます。
フレッシュタイプ
- 新鮮な生のもの
- 日持ちが悪い
- ハーブはフレッシュな方が、青臭く香りが強い傾向にある
ドライタイプ
- 乾燥させたもの
- 日持ちが良い
- スパイスはドライの方が香りが強い傾向にある
スパイスとハーブの形
フレッシュかドライかに分類した後は、形状は4種類に分かれています。それぞれのスパイスやハーブの香りがたつように、使いわけることが必要です。
ホール
- 原型のまま乾燥させたもの
- スパイスのドライ・ホールは長期保存が可能
- フレッシュ・ハーブの多くが、ホールで使用される
ペースト
- フレッシュな状態で、潰したり細かく攪拌されたもの
- バジルペーストなどが有名
- タイ料理の特徴はフレッシュハーブをペーストにすること。爽快感のある香りを楽しむ
パウダー(細挽き)
- ホールを細かく挽いたもの
- 食材に振りかけたり、混ぜやすいため食材になじみやすい
- 複数のスパイスをブレンドしたミックススパイスとして販売される
カット&粗挽き
- 香りが出やすいように、小さくカットしたり、粗く挽かれたもの
- ブラックペッパーやレッドチリなどは、粗挽きも使われる
- 下ごしらえから料理の仕上げにまで重宝する
スパイスとハーブの役割
スパイスとハーブには主に3つの役割があり、料理はこれらの作用を利用しています。
- 賦香作用(ふこうさよう):香りをつける
- 着色作用:色をつける
- 矯臭(きょうしゅう)・脱臭作用:臭みをけす
賦香作用(ふこうさよう):香りをつける
スパイスやハーブは、ほとんどが独特の刺激的な香りを持っています。芳香性、刺激性、爽快性の3つが特徴です。
料理の風味を引き立てたり、アロマとしてリラックス効果があります。
着色作用:色をつける
着色効果といい、植物がもつ色が料理に溶け出します。色をつけるのもスパイスやハーブを使う重要な目的の一つです。
サフランやクチナシは黄色が特徴です。サフランはカレーと共に食べるサフランライス、クチナシはたくあんに使用されています。
矯臭(きょうしゅう)・脱臭作用:臭みをけす
スパイスやハーブには、肉や魚のくさみを消す効果があります。この効果は「マスキング」と呼ばれ、悪臭を別の香りで覆い隠すものです。具体的には、以下の3つのアプローチがあります。
- 香りで匂いを消す: 強い香りで不快な匂いを覆い隠します。
- 化学成分で分解する: 特定の成分がくさみを化学的に分解します。
- 刺激臭で感じさせない: スパイスやハーブの刺激臭がくさみを目立たなくさせます。
これらの方法を使い分けることで、料理の風味を引き立てると同時に、臭みを効果的に取り除くことができます。
その他の作用
- 辛味をつける
- 抗酸化作用
- 抗菌・防腐作用
- 塩味や甘味をひきたてる
- 薬理作用
- 料理の味を引き立てる
たいていのスパイス、ハーブは複数の作用をあわせ持っています。
代表的なスパイスの紹介
代表的なスパイスを5つ紹介します。
日本でも入手しやすいものばかりで、料理に取り入れやすいスパイスです。
クミン
- セリ科の一年草
- カレーに欠かせない重要なスパイス
- インド料理、エスニック料理など世界的に使用
- シードとパウダー、どちらも使われる
胡椒(ペッパー)
- コショウ科のつる性の草本
- グリーン:未熟なもの
- ブラック:未熟なまま乾燥
- ホワイト:完熟後に水に浸して発酵させたのち外皮をとって乾燥させたもの
- ピンク:完熟後に乾燥
シナモン
- クスノキ科の常緑樹
- 別名:ニッケイ、ニッキ、ケイヒ
- 料理からお菓子まで使用される
- 他の素材の甘味を高める
- シナモンロールやジャムに欠かせないスパイス
ナツメグ
- 二スグス科の常緑樹
- 刺激的でエキゾチックな甘い香り
- ひき肉料理で肉の臭み消しに使われる
- 甘い香りを引き立てるため、お菓子にも使われる
カルダモン
- ショウガ科の多年草草本
- 「スパイスの女王」と称される
- サフラン・バニラに次ぐ高級スパイス
- 料理からお菓子まで使われる
- ミックススパイスに使われる
代表的なハーブの紹介
つぎに代表的なハーブを5つ紹介します。生のものを使いたい場合は、栽培がおすすめです。ドライタイプも流通しており、香りの質が違うので、使い分けるとよいでしょう。
バジル
- シソ科の一年草
- 40種類以上の変種がある
- 「ハーブの王様」として親しまれる
- イタリア料理にかかせないハーブ
- 生、ドライのどちらも使われる
ミント
- シソ科の多年草
- 別名:ハッカ、メグサ、メハリグサ
- 繁殖力が強く、20種類以上が栽培されている
- 料理、お菓子、お茶として親しまれる
- カフェインが含まれていないので、夜に飲むドリンクとしてミントハーブティーがおすすめ
しそ
- シソ科の一年草
- 日本で馴染み深いハーブ
- 薬味として、魚の臭み消しとして使われる
- 赤しそは梅干しの着色に使用される
- しその実、穂ジソも活用できる
ローズマリー
- シソ科の常緑小潅木
- スパイスの中でも香りが強く、長時間続く
- 加熱に強い
- シチューやスープによく使われる
- 料理だけでなく、コスメ、石鹸、薬にも活用
パセリ
- セリ科の2年生草本
- 古代ギリシャの時代から使われている
- フランスではブーケガルニに使用
- 中東ではサラダとして生で大量に食べる
- ドライタイプは生より、香りが弱まるが、青臭さが少ないので使いやすい
スパイスとハーブでおうちごはんをレベルアップしよう
- スパイスとハーブに明確な境界はない
- 調香料としての役割を重視
- 賦香作用、着色作用、消臭作用がある
今回はスパイスとハーブの違いを紹介しました。スパイスとハーブの定義は曖昧であり、両義的な顔をもつ植物も含まれています。身近な野菜もスパイス・ハーブに属しているものがあることが分かりました。
ハーブやスパイスの使い方を学べば、料理の風味をあげ、より一層華やかさを加えることができます。ダイエット向きのレシピもありますので、スパイス料理に挑戦してみましょう。